掌蹠膿疱症
掌蹠膿疱症とは
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、手のひらや足の裏に、膿疱(のうほう)と呼ばれる小さな膿のたまった水ぶくれが繰り返しできる、慢性的な皮膚疾患です。
最初は小さな水ぶくれができ、次第に黄色い膿疱に変化します。その後、茶色くなって乾燥し、皮膚が剥がれ落ちます。赤みや厚い角質を伴うことも多く、症状が強いと皮膚に亀裂が生じ、歩くと痛い、手を使った作業がしづらいなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
中年以降の女性に比較的多く、喫煙者に多いことが知られています。良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴で、治療が長期間に及ぶこともあります。
また、掌蹠膿疱症の患者さんの中には、胸骨や鎖骨、背骨などに炎症が起こり、痛みを伴う「掌蹠膿疱症性骨関節炎」を合併する方もいます。掌蹠膿疱症の原因
掌蹠膿疱症の原因は完全には解明されていませんが、免疫の異常によって皮膚に炎症が起こると考えられています。発症や悪化に関係する要因として、以下のものが知られています。
喫煙
掌蹠膿疱症は喫煙者に多く、喫煙が発症や悪化に関与していると考えられています。禁煙は治療の重要な一つであり、薬による治療と並行して禁煙に取り組むことをお勧めします。ただし、禁煙後すぐに皮疹が改善するとは限りません。
病巣感染
扁桃炎、歯周病、虫歯など、体のどこかに慢性的な感染や炎症が存在することが、掌蹠膿疱症の悪化に関係する場合があります。のどの炎症を繰り返す方や、歯科治療が必要な方では、耳鼻咽喉科や歯科での診察をお勧めすることがあります。ただし、すべての患者さんに病巣感染が見つかるわけではありません。
金属アレルギー
一部の患者さんでは、歯科金属などに対する金属アレルギーが関係している可能性があります。必要に応じてパッチテストを検討しますが、金属アレルギーがあるからといって、必ずしも歯科金属を除去する必要があるわけではありません。
掌蹠膿疱症の診断
手のひらや足の裏に繰り返し膿疱ができるという特徴的な症状と、皮膚の状態を視診して診断します。似た症状が出る病気には、汗疱(異汗性湿疹)、手足の白癬(水虫)、接触皮膚炎、乾癬などがあります。特に足の裏では水虫と間違われることもあるため、必要に応じて顕微鏡検査を行います。
掌蹠膿疱症の治療法
掌蹠膿疱症の治療では、喫煙や病巣感染などの悪化因子への対策と、皮膚の炎症を抑える治療を組み合わせます。塗り薬だけでは改善が不十分な場合には、紫外線療法や内服療法などを検討します。
外用療法(塗り薬)
ステロイド外用薬
炎症を抑える作用があり、掌蹠膿疱症の基本的な治療薬です。手のひらや足の裏は角質が厚いため、クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏など、強いランクのステロイド外用薬を使用することがあります。症状に応じて薬の強さや塗布回数を調整します。長期間使用すると、皮膚萎縮や感染症などの副作用が起こる可能性があるため、適切な使用が必要です。
活性型ビタミンD3外用薬
オキサロール®(マキサカルシトール)軟膏などを使用します。皮膚の角化を正常化し、炎症を抑える作用があります。ステロイド外用薬と組み合わせて使用することもあります。副作用として、皮膚への刺激や、使用量によっては高カルシウム血症などが起こることがあります。
保湿剤
掌蹠膿疱症では皮膚が厚くなり、乾燥や亀裂が生じることがあります。保湿剤は炎症そのものを抑える薬ではありませんが、皮膚の乾燥や亀裂を改善するために併用します。
紫外線療法
塗り薬で十分に改善しない掌蹠膿疱症に対して、紫外線療法を行うことがあります。紫外線には皮膚の過剰な免疫反応を抑える作用があります。田町駅前皮膚科 Clinica Riviera Shibauraでは、2種類の紫外線治療機器を導入しています。
エキシマライト(FlexSys Fit 100)
エキシマライトは308nmの紫外線を照射する治療機器です。手のひらや足の裏など、限られた範囲の皮疹に集中的に照射することができます。健康な皮膚への照射をできるだけ避けながら治療できるため、掌蹠膿疱症のように病変が限局している疾患に適しています。
ナローバンドUVB(Daavlin 7)
311~313nm付近の紫外線を照射する治療法です。広い範囲の皮膚疾患に使用される治療機器で、掌蹠膿疱症にも使用することがあります。紫外線療法は通常、繰り返し照射することで効果を確認します。通院頻度は症状や治療への反応によって調整します。副作用として、照射部位の赤み、ヒリヒリ感、色素沈着などがあり、長期的には光老化や皮膚がんのリスクにも注意が必要です。
紫外線療法と内服薬の併用
掌蹠膿疱症では、外用薬や紫外線療法だけで十分な改善が得られない場合、内服薬を組み合わせて治療することがあります。オテズラ®(アプレミラスト)と紫外線療法は、それぞれ異なる作用によって皮膚の炎症を抑えるため、併用によって治療効果の向上が期待されます。ただし、掌蹠膿疱症に対する両者の併用効果については、まだ十分な臨床データがあるわけではありません。当院では、皮膚症状や治療への反応を確認しながら、患者さん一人ひとりに適した治療を選択します。
内服療法(飲み薬)
外用療法や紫外線療法で十分な効果が得られない場合には、内服薬を検討します。
PDE4阻害薬:オテズラ®(アプレミラスト)
オテズラ®は、炎症に関係するPDE4という酵素を阻害することで、過剰な免疫反応を調整する内服薬です。2025年3月に、局所療法で効果不十分な掌蹠膿疱症に対して保険適用が追加されました。
国内第III相臨床試験では、投与開始2週目という早期から改善効果が認められ、16週時点では約68%の患者さんが皮膚症状の50%以上の改善(PPPASI-50)を達成しました。
PPPASIは、掌蹠膿疱症の皮疹の重症度と範囲を評価する指標です。PPPASI-50は、治療前と比較してスコアが50%以上改善したことを意味します。
オテズラ®は少量から開始して徐々に増量し、通常は1日2回内服します。主な副作用として、吐き気、下痢、頭痛、食欲低下などがあります。また、気分の落ち込みなどにも注意が必要です。当院では、症状やこれまでの治療経過に応じて、紫外線療法との併用も検討します。
ビタミンA誘導体:チガソン®(エトレチナート)
チガソン®は、皮膚の角化を正常化する作用を持つビタミンA誘導体(レチノイド)です。ほかの治療で十分な効果が得られない重症の掌蹠膿疱症に対して使用することがあります。
副作用として、口唇や皮膚の乾燥、肝機能障害、脂質異常などがあります。また、強い催奇形性があるため、妊娠中の方には使用できず、服用終了後も女性は2年間、男性は6か月間の避妊が必要です。副作用や患者さんの状態を十分に考慮したうえで、使用を検討します。
生物学的製剤(注射薬)
従来の治療で十分な効果が得られない中等症から重症の掌蹠膿疱症に対しては、生物学的製剤を使用することがあります。 トレムフィア®(グセルクマブ):炎症に関係するIL-23という物質の働きを抑える注射薬です。2018年に掌蹠膿疱症に対して保険適用となりました。
ルミセフ®(ブロダルマブ):炎症に関係するIL-17の受容体に作用し、IL-17の働きを抑える注射薬です。2023年に掌蹠膿疱症に対して保険適用となりました。
いずれも、既存の治療で十分な効果が得られない中等症から重症の患者さんが対象です。治療開始前には結核などの感染症の検査が必要であり、治療中も感染症などの副作用に注意する必要があります。生物学的製剤による治療が望ましいと考えられる患者さんには、対応可能な総合病院や大学病院をご紹介します。
掌蹠膿疱症についてよくある質問(FAQ)
Q1. 掌蹠膿疱症は人にうつりますか?
A
いいえ、掌蹠膿疱症は人にうつる病気ではありません。膿疱の中には通常細菌が存在せず、細菌やウイルスによる感染症ではありません。そのため、患部に触れたり、タオルやお風呂を共用したりしても、他の人にうつることはありません。
Q2. 掌蹠膿疱症は完治しますか?
A
掌蹠膿疱症は、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な皮膚疾患ですが、長期間症状が出なくなる方もいます。自然に軽快することもありますが、経過には個人差があり、数年以上続くこともあります。適切な治療と、禁煙や病巣感染への対策によって、症状の改善や再発の予防を目指します。
Q3. 掌蹠膿疱症は禁煙すれば治りますか?
A
喫煙は掌蹠膿疱症の発症や悪化に関係する重要な因子の一つです。禁煙によって症状が改善することがありますが、禁煙すれば必ず治るというわけではありません。禁煙後も症状が続く場合には、外用薬、紫外線療法、内服薬などによる治療を並行して行います。
Q4. 塗り薬で治らない場合、ほかの治療法はありますか?
A
はい。塗り薬で十分な改善が得られない場合には、紫外線療法や内服療法などの選択肢があります。当院では、エキシマライトやナローバンドUVBによる紫外線療法を行っています。また、2025年に掌蹠膿疱症への保険適用が追加されたオテズラ®(アプレミラスト)による内服治療も選択肢となります。症状やこれまでの治療経過に応じて、適切な治療をご提案します。
Q5. 掌蹠膿疱症の紫外線療法は保険適用ですか?
A
はい。掌蹠膿疱症に対するエキシマライトやナローバンドUVBによる紫外線療法は、保険診療で受けることができます。通常は週1~2回程度の照射を行い、皮膚の状態や治療への反応を確認しながら照射量や通院頻度を調整します。効果が現れるまでには複数回の治療が必要なことが多く、症状に応じて外用薬や内服薬と組み合わせることもあります。