表情ジワ
表情ジワとは
表情ジワとは、笑ったり怒ったりした際に表情筋が動くことで皮膚にできるシワのことです。若いうちは、シワは一時的なもので真顔になると消えるのですが、長年にわたり表情筋の運動が繰り返されると、加齢による肌の弾力性低下も伴って、無表情の時にもシワが残るようになり、固定してしまいます。眉間、目尻、おでこ、口元などができやすい部位ですが、解剖学的な差から、人種によっても出やすさや出方が違いますし、当然顔かたちや表情のくせによって、ひとりひとり異なるシワの出方をします。
代表的な表情ジワの位置
額の横ジワ
前頭筋の収縮によっておでこに複数の横ジワが入ります。眼瞼下垂があるために上まぶたを頑張って開けようとしてシワができる人もいます。
眉間の縦シワ
目をしかめたときに入るシワです。眉筋や鼻根筋の収縮により、眉間に1本または2本のシワが入ります。左右に2本ずつのこともあります。前頭筋の関与で眉間の上に横ジワが入ることもあります。鼻根筋の働きが強いと、眉間の下(鼻の根元)に横ジワを伴うことがあります。
目尻のシワ(笑いジワ)
笑ったり目を細めたりするときにできる放射状のシワです。英語でcrow’s feet(カラスの足)と呼ばれています。目を囲むようにドーナツ状に走る眼輪筋の収縮によるものです。
あごのシワ(梅干しジワ)
オトガイ筋の過緊張によりあごにくしゃくしゃとしたシワができます。アジア人によく見られます。顎が後ろに下がっていたり、小さかったり、歯並びが悪かったりするとできやすく、また加齢とともにあごの骨が委縮してきてできることもあります。
表情ジワの治療
表情ジワの治療には、ボツリヌストキシンの注射を行います。ボツリヌストキシンは、ボツリヌス菌によって産生されるA型ボツリヌス毒素という成分を含む製剤です。表情ジワの治療においては、これをシワを作っている筋肉内に注射し、筋肉の収縮を抑えます。本来、BOTOX®は米国アラガン社の製品名ですが、この名前が広まり、一般名詞のように使われています。
ボツリヌストキシン注射
ボツリヌス毒素は、運動神経からのアセチルコリンという物質の放出を阻害し、筋線維への神経伝達を遮断します。ボツリヌストキシンを注入すると、顔を動かす表情筋の動きが抑制されるので、筋肉が弛緩し、シワの形成を防ぐことができます。
通常、効果は施術後2〜3日で現れ始め、2~4週間で最大となり、約4〜6か月持続し、その後徐々に消えていきます。効果が切れるので繰り返しの注射が必要です。
シワが固定される前に治療を開始するのがベストですが、多少シワが出てきてからでも、シワが浅くなることが多いです。
副作用
ボツリヌストキシンの副作用は、注射部位の近傍にある別の筋肉にも効いてしまった場合に起こります。例えば、眉間の縦ジワの治療でボツリヌストキシンを打つと、眼瞼下垂といって上まぶたが垂れ下がることがあります。また、ふだんからおでこの筋肉でまぶたを上げている方の場合も、おでこの横ジワに対してボツリヌストキシンを打つと、上まぶたが重く感じられることがあります。さらに、左右の片方により強く効いてしまったために、表情に左右差が出ることがあります。こういった副作用は一時的なもので、効果が切れるのと同時に消失します。その他の副作用も併せてまとめると下記のようになります。
- 注射部位の赤み、腫れ、痛み、内出血
- 頭痛、違和感、表情の不自然さ
- まぶたや眉が下がる、笑いにくさ、口元の動かしにくさなどの一時的症状
- まれにアレルギー反応や感染
- ごくまれに全身性の副作用(嚥下障害、呼吸困難、全身脱力など)