乾癬
乾癬とは
乾癬(かんせん)は、皮膚に赤い盛り上がりがたくさんできる慢性的な皮膚疾患です。赤みは境界がはっきりしていて、丸や楕円の形をしていたり、いくつかくっついて大型になったりしています。表面には白いカサカサしたフケついて、ゴワゴワしています。主に肘、膝頭、頭皮、背中では特に腰回り、顔ではおでこなど、皮膚が摩擦、圧迫を受けやすいところに出やすく、かゆみを伴うこともあります。また、手や足の爪にボコボコした凹みができることがあります。
乾癬は、日本人よりも欧米人で有病率が高く、日本では、女性の患者さんよりも男性の患者さんが倍くらいいます。
乾癬の原因は完全には分かっていませんが、ふつう表皮のターンオーバーが45日くらいかかるのに、乾癬の皮膚ではターンオーバーが4~7日と極端に短縮しています。
乾癬のうち、もっとも普通のタイプを尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)と呼んでいます。乾癬の皮疹に関節炎を伴う場合は、関節症性乾癬、あるいは感染性関節炎と呼び、整形外科と連携しながら、関節の変形が起きないようしっかりと治療を行う必要があります。
乾癬の治療法
乾癬の治療は、症状の重さや体のどの部分に出ているか、合併症などによって方法が異なります。
生活習慣病の治療
乾癬は皮膚の炎症ですが、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満といった内臓の炎症と関わりがあることが知られてきています。
健康診断で血糖値やコレステロールが高くて受診を勧められていたけれど放っておいた、という方は、乾癬の診断を機に、内科を受診して必要な治療を受けることをお勧めします。ご希望に応じて当院から適切な医療機関にご紹介することもできます。
外用療法(塗り薬)
軽症の患者さんには、まずは、ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬を用いた治療を行います。ステロイドは炎症を抑える薬、ビタミンD3製剤はカサカサ、ゴワゴワを抑える薬で、両方同時に使うのがより効果的です。
ステロイド
ステロイドは顔以外は一番強いクラスのものを使うことが多く、デルモベートⓇ(クロベタゾールプロピオン酸エステル)軟膏/クリームやダイアコートⓇ(ジフロラゾン酢酸エステル)軟膏/クリームがそれにあたります。ステロイド剤の副作用として、二次感染があります。
ビタミンD3製剤
オキサロールⓇ(マキサカルシトール)軟膏/ローション、ドボネックスⓇ(カルシポトリオール)軟膏があります。ビタミンD3製剤の副作用として、血液中のカルシウムの濃度が上がることがあります。通常決められた量を塗っている限りはほとんど起こりませんが、内科や整形外科など別の医療機関でもらっている飲み薬との組み合わせによっては起こる可能性があり、消化器症状、腎機能障害を来しうるため注意が必要です。
ステロイドとビタミンD3の合剤
2種類塗るのは大変なこともあり、合剤といって、このステロイド剤とビタミンD製剤の2種類が混ざっている塗り薬もあります。(ただしステロイドの強さは上から2番目のクラスになります。)マーデュオックスⓇ(マキサカルシトール/ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル配合製剤)軟膏、ドボベットⓇ(カルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル配合剤)軟膏/ゲル/フォームがあり、べたつくのが嫌な患者さんは泡が出てくるスプレータイプのドボベットⓇフォームが使いやすいかもしれません。
ブイタマーⓇ(タピナロフ)クリーム
最近出てきた薬です。皮膚の炎症を抑えバリア機能も高める作用があり、乾癬だけではなくアトピー性皮膚炎に対しても使われています。副作用として、塗り薬としては驚くことに、頭痛があります。他に、かぶれ、にきびなどがあります。
乾癬に使われる塗り薬の特徴を以下の表にまとめました。
紫外線療法
塗り薬では症状が抑えきれない場合は、紫外線療法を行います。
田町駅前皮膚科 Clinica Riviera Shibauraでは、次の2種類の紫外線治療機器を導入しています。
ダブリン7(Daavlin 7)(ナローバンドUVB)
広範囲に赤い発疹が出ている方に適しています。立った状態で前面、後面の2回に分けて照射を行います。
FlexSys Fit 100(エキシマライト)
肘、膝、手足、頭皮の生え際など、限られた部位に赤い発疹がある方に適しています。ピンポイントでの照射が可能なため、健康な皮膚への影響を抑えながら治療できます。爪の症状にも効くことがあります。
いずれも照射自体は数分程度で済みます。前回の照射の反応をみながら強さを調節していきます。お時間が取れる方は週2、3回、お忙しい方は2週に1回くらいを目安に治療を受けてください。紫外線療法の副作用として、やけどのように皮膚が赤くなる、ただれる、色素沈着が起きる、皮膚がんのリスクがある、光老化を起こすことなどがあります。
内服療法(飲み薬)
尋常性乾癬の中等症から重症の方に対して、内服治療を行うことがあります。
ビタミンA誘導体
チガソンⓇ(エトレチナート)カプセルというお薬で、1日分を1~3回に分けて、食後に服用します。分厚い角質を薄くする作用がありますが、内服薬のため、患部だけではなく、皮膚や粘膜の正常部位にも効いてしまいます。
副作用として、皮膚の乾燥、口唇炎、脱毛、肝機能障害、血中脂質の上昇などがあります。催奇形性があるため、妊娠している方、妊娠の可能性がある方中は服用できません。女性は内服中止後少なくとも2年間、男性は少なくとも6か月避妊する必要があります。副作用が強いことから、後述する生物学的製剤の登場によって使われることが減りました。
免疫抑制薬
ネオーラルⓇ(シクロスポリン)カプセル/内用液というお薬で、リンパ球を邪魔することで免疫を抑制します。血中濃度を定期的に確認しながら用量を調整し、1日2回、朝と夕方に服用します。腎機能障害、肝機能障害、高血圧、高脂血症、歯肉肥厚、免疫力低下による感染症など副作用が多く、後述する生物学的製剤の登場によって使われることが減りました。
PDE4阻害薬
オテズラⓇ(アプレミラスト)というお薬で、ホスホジエステラーゼ(PDE)4という分子を阻害することで、炎症を引き起こす細胞の働きを抑えます。少量から開始して徐々に増やし、最終的には決まった量を1日2回内服します。副作用として、吐き気、下痢、食欲低下、頭痛、倦怠感、気分の落ち込みなどが出ることがあります。消化器症状については胃薬や整腸剤の併用でよくなることが多く、慣れるとそれらも不要になることがあります。
TYK2阻害薬
ソーティクツⓇ(デュークラバシチニブ)錠というお薬です。新しいタイプの内服薬で、チロシンキナーゼ2(TYK2)という分子にくっつくことで、TYK2が活性化されなくなり、炎症反応が抑制されます。1日1回内服し、食事の前後は問いません。副作用として、上気道感染、単純ヘルペス、帯状疱疹などがあります。免疫力を抑える作用があるため、結核にかかったことがある方、B型肝炎ウイルスキャリアの方などは、注意が必要になります。
乾癬に使われる飲み薬の特徴を以下の表にまとめました。
生物学的製剤(注射薬)
塗り薬、紫外線療法などでしっかり治療をしたにも関わらず症状がコントロールできない、また関節症状もある、といった場合には、生物学的製剤という種類の薬を使います。免疫を抑制する作用があり、身体にとって有益な免疫も抑えてしまうリスクがあるため、重症な患者さんに使用が限られています。費用も高額になりますが、高額療養費制度で負担を軽減することができます。生物学的製剤の導入が望ましいと考えられる患者さんは、ご希望に応じて総合病院、大学病院などにご紹介させて頂きます。