しみ・そばかす・くすみ
顔にできるシミの種類と治療法

皮膚に茶色や灰色の斑点があるのを、わたしたちは一般にシミと呼んでいます。しかし一口にシミといっても、種類が違えば病態が異なるため、適切な治療が変わってきます。やみくもに美容治療を受けても悪化してしまうリスクがあり、まずは正しい診断を受けることが大切です。以下のシミの複数を有している方も稀ではありません。
老人性色素斑と脂漏性角化症
老人性色素斑は、年を取るとほとんどの人に現れるシミで、顔のほか、手の甲、腕など紫外線を浴びたところにできます。褐色調の、境界がはっきりとしたシミです。
表面がカサカサして盛り上がってくると、腫瘍の扱いになり、脂漏性角化症といいます。俗に老人性のいぼと呼ばれています。
老人性色素斑の場合、ハイドロキノンの外用やレーザー治療が行われます。当院で使用しているDiscovoery Plusでは、QスイッチYAGレーザー(波長532 nm)、Qスイッチルビーレーザー(波長694 nm)、ピコYAGレーザー(波長532 nm)のいずれも効く可能性がありますが、特にご希望のない方は、より炎症後色素沈着のリスクの少ないと考えられる、ピコYAGレーザーをお勧めしています。
Discovery PICO Plus(ディスカバリーピコプラス)についてはこちら
脂漏性角化症については、液体窒素凍結療法のほか、高周波電気メスによる手術、炭酸ガスレーザーによる焼灼などが治療として挙げられます。
高周波電気メスについてはこちら 炭酸ガスレーザーについてはこちら肝斑
肝斑は、30代から50代の女性に見られる茶褐色斑で、典型的には頬の高い位置に左右対称にみられます。ややグレーを帯びていることもあります。
老人性色素斑と異なり、境界線がはっきりしません。肝斑は炎症後色素沈着(下記参照)にすぎない、と考えている医師もいるほどですので、治療においては、まずは紫外線を避けることと摩擦を避けることが大事です。
内服薬としては、ビタミンC(シナール)やトラネキサム酸(トランサミン)の内服がよく行われ、ハイチオール(L-システイン)、ビタミンE(ユベラ)、グルタチオン(タチオン)も用いられることがありますが、最も有効性がデータでしっかりと示されているのはトラネキサム酸です。
トラネキサム酸は血栓ができやすくなる副作用があり、またビタミンEも脂溶性ビタミンのため過剰摂取で中毒症状が起きることがありますので注意が必要です。
外用については、ハイドロキノン、アゼライン酸、トレチノイン、トラネキサム酸などが使われます。またグリコール酸などによるケミカルピーリングや光治療(当院未導入)を行うこともあります。
またシミなのでレーザーが効くだろうと考える方が多いと思いますが、普通にレーザーを当てると肝斑は悪化します。(医学的にいうと、器質的疾患ではなく、機能的疾患だからです。)レーザーの設定を弱くして当てる手技は俗にレーザートーニングと呼ばれていますが、トーニングは賛否両論で、余計濃くなったり白抜けしたりするリスクがあるため、少なくとも他の治療と組み合わせた上で行う必要があります。
トーニングに用いるレーザーにもいろいろな種類がありますが、QスイッチYAG、ピコYAGレーザー(フラクショナルおよび非フラクショナル)ともに、有効であるとする報告がありますが、ハイドロキノンの外用など他の治療と組み合わせているケースもあります。
またこれらのデータは、肝斑ではなく合併する別のシミが薄くなっただけであるという指摘や、長期経過を見ていないので再発が捕捉できていないという指摘もあります。
結論として、現在のところ肝斑に対するレーザー治療は当院では第一選択としてはお勧めしておりません。老人性色素斑など別のシミを合併しておりそちらの治療目的で行う場合は、バックグラウンドにある肝斑が悪化しないか注意する必要があります。
雀卵斑<そばかす>
雀卵斑は、俗にそばかすといわれるもので、頬から鼻にかけて小型の褐色斑が散在します。白人に多く、遺伝性疾患です。子供のころからありますが、思春期以降は薄くなり、むしろ老人性のシミを合併してそちらの方が目立つ、ということも多いです。レーザー治療がよく効きますが、再発もありますのでレーザー照射後のケアも大切です。当院で使用しているDiscovoery Plusでは、QスイッチYAGレーザー(波長532 nm)、Qスイッチルビーレーザー(波長694 nm)、ピコYAGレーザー(波長532 nm)のいずれも効く可能性がありますが、一回で取ることを目指して、メラニンにしっかり吸収されるQスイッチルビーレーザーをお勧めしています。
Discovery PICO Plus(ディスカバリーピコプラス)についてはこちら
太田母斑、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
太田母斑は、生後1年以内、あるいは思春期までに片側のおでこや目の周りに生じる青灰色斑または褐色斑です。白目の部分にも色素斑が見られることがあります。一方、後天性メラノーシスは思春期あるいは成人以降に、両側性の目の周りなどにできる褐色斑または青灰色斑です。いずれも真皮には通常いないはずのメラノサイトというメラニンを作る細胞が増えています。レーザー治療が効きますが、数回の照射が必要です。照射後にレーザーの副作用で炎症後色素沈着が起きるので、早く治そうと急いで頻繁に当てるよりも、3か月以上しっかり待って薄くなり止まったところで次の照射を行う方がよいです。当院ではQスイッチルビーレーザーまたはQスイッチYAGレーザー、ピコYAGレーザーのいずれかを用いて治療することができます。太田母斑に対しては、ルビーレーザー、YAGレーザーの保険適用がありますが、ルビーレーザーは5回までとなっています。色素脱失などを生じる可能性もあるため、5回を超える照射は望ましくありません。
Discovery PICO Plus(ディスカバリーピコプラス)についてはこちら
炎症後色素沈着
皮膚に何らかの炎症が起きると、炎症が治まったあとに茶色いシミになることがあります。顔ですと、ニキビややけど、アトピー性皮膚炎による湿疹のあとにできたものを気にされる方が多く、またシミ治療のレーザー照射後に起きることも稀ではありません。アトピー性皮膚炎では、「炎症の後」ではなく炎症の真っ最中ということも多々あり、まずはそのコントロールが先決です。炎症後色素沈着の治療においては、紫外線を避けることが大事で、ビタミンCやトラネキサム酸の内服を行うこともあります。ハイドロキノンの外用もよいですが、かぶれているのに使い続けると悪化しますので注意が必要です。
摩擦黒皮症
頻度は低いですが、美容相談を受けているとたまに遭遇することがあります。皮膚をこすることで色素沈着がおきます。境界ははっきりせず、淡い褐色からやや灰色を帯びます。クレンジングで強くこすったり、美容液を強く塗り込んだりすることでおきます。おそらく一部でスキンケア肝斑と呼ばれているものは皮膚科学的にはこの疾患であると思います。治療はこのような行動をやめることが一番です。普通のレーザー治療では悪化します。紫外線を避け、ビタミンCやトラネキサム酸の内服を行うこともあります。ハイドロキノンの外用もよいですが、またこれを強く擦り込んだり、かぶれているのに使い続けたりすると悪化しますので注意が必要です。
くすみ
はっきりとしみが見えるわけではないけれど、肌の色がなんとなくくすんで見える、ワントーン明るくしたい、という場合、ごく淡いシミがあったり、隠れ肝斑などシミが深いところにあったりするのかもしれません。ビタミンCやトラネキサム酸の内服、外用のほか、ピコトーニングやルビーフラクショナル、Mesona-Jの美白コースなどをご提示しています。施術前にNeo Voirで肌診断を受けて頂くことも可能です。