
皮膚腫瘍 できもの
皮膚腫瘍〈できもの〉
ここでは、できものがあって何なのか気になる、悪いものではないか心配だ、見た目が嫌なので取りたい、という方向けに、皮膚科でよくみられるできものと、その治療法について説明します。
できものの種類
皮膚科でよくみられるできものを病名で列挙すると以下のようになります。俗称があるものは併記します。
まず良性のものとして、
粉瘤、石灰化上皮腫、色素性母斑/母斑細胞性母斑〈ほくろ〉、軟性線維種〈いぼ〉、皮膚線維種、老人性血管腫、汗管腫、脂肪腫、ケラトアカントーマ
悪性のものとして、
基底細胞癌、日光角化症、ボーエン病、有棘細胞癌、悪性黒色腫、隆起性皮膚線維肉腫 などがあります。
① 粉瘤
皮膚の下に、皮膚の表面と同じ構造をした袋ができ、皮膚のターンオーバーとともに垢が溜まり、どんどん大きくなるものです。時に細菌感染を起こすこともあります。背中やおしりなどによくでき、多発する人もいます。見た目ではわからないこともあれば、灰色っぽく透けてみえ、真ん中に毛穴のような入り口があることもあります。感染を起こすと赤く腫れ、ひどいと膿が溜まったり破れて出てきたりします。粉瘤自体は悪いものではありませんが、感染を繰り返し煩わしい場合は、取ることをお勧めします。
主な治療法:金属メスやトレパン(皮膚パンチ)による切除
② 石灰化上皮腫
皮膚の下にごろごろとしたできものができます。青っぽい灰色に透けて見えることが多いですが、粉瘤と同じように細菌感染を起こして赤く腫れることもあります。子供に多いできもので、小さい子供の場合、無理してまで取る必要はありませんが、途中で感染するリスクも考慮に入れながら、手術の時期は親御さんと相談することになります。
主な治療法:金属メスやパンチによる切除
③ 色素性母斑/母斑細胞母斑〈ほくろ〉
いわゆるほくろです。最初は黒や茶色のしみ状ですが、時を経て盛り上がり、いぼのようになることもあります。ほとんどの人にあるものなので、必ずしも取る必要はありませんが、髭剃りのときに引っかかって出血する、まぶたの際にあって視界に入る、といった場合は、切除してしまった方がよいでしょう。大型の場合は、数回に分けて取ることもあります。
主な治療法:金属メスやトレパン(皮膚パンチ)による切除、炭酸ガスレーザー
④ 軟性線維種〈いぼ〉
皮膚と同じ色の軟らかいこぶができるものです。皮膚のポリープです。摩擦によってできやすいためか、首やわき、股のつけねによくできます。多くの場合、多発します。
主な治療法:金属メスやはさみによる切除、高周波電気メス、炭酸ガスレーザー
⑤ 皮膚線維種
茶色くて硬い円形のできもので触わると厚みがあります。うでやあし、からだなど様々なところにできます。虫刺されやかきこわしのあとにできる傷あとにもよく似ています。悪さをすることがないので放っておいてもよいですが、気になるので取りたい、という方は、手術のあとの傷あとが肥厚性瘢痕やケロイドになった場合に、見た目があまり変わらないか、あるいはもとのできものよりももっと目立ってしまうこともあるので、整容的リスクを考えて手術を受けるか決める必要があります。
主な治療法:金属メスによる切除
⑥ 老人性血管腫
加齢に従って赤い小さな粒々が体中にできることがあります。外科的に取ってしまうのが一番確実ですが、傷あとが残ってしまうため、赤い色に反応する色素レーザーを使うのが一般的です。
主な治療法:色素レーザー(Vビーム)
⑦ 汗管腫
下まぶたに透明感のある小さなぶつぶつがたくさんできる病気です。汗の通り道を構成する細胞が増えて汗の管もどきがたくさんできている状態です。よく近づいて見ないと他人は気付かない程度のものなので、術後の傷あとの方がかえって目立ってしまうリスクがあり、さまざまな治療法が試されていますが、どれがよいかについては医師の見解が分かれるようです。どういう傷あとだったら許せるのか、1回で確実に取りたいのか、などを材料に検討するとよいでしょう。
主な治療法:トレパン(皮膚パンチ)による切除、サージトロン、炭酸ガスレーザー、ニードルRFアグネス(当院未対応)、エルビウムヤグレーザー(当院未対応)
⑧ 脂肪腫
皮膚の下にあるできものなので、通常皮膚表面には変化がありません。脂肪細胞が増えて塊になって軟らかいこともありますが、意外に反発を感じるような硬さのこともあります。大型である、筋層の中に入っているなど、出血のリスクが高い場合には、高次医療機関をご紹介させて頂くことがあります。
主な治療法:金属メスによる皮膚切開の上で切除
⑨ 基底細胞癌
高齢者の顔によくみられる黒から赤をしたできもので、一部盛り上がったりすることもある、悪性のできものです。ダーモスコピー検査が非常に有効であり、この疾患であることが強く疑われる場合は、皮膚生検を省略して、最初から一回り大きめに切除して完治を図ることがあります。転移はめったにしないので、今ある病変を確実に取ることを目指します。
主な治療法:金属メスによる切除
⑩ 日光角化症
高齢者の顔によくみられる赤いカサカサしたできもので、湿疹や扁平苔癬様角化症などの他の良性疾患と紛らわしいこともあります。皮膚を一部切り取る皮膚生検を行って診断を付けることが多いです。病名が「症」で終わっていて良性のいぼと紛らわしい病名ですが、有棘細胞癌という皮膚癌に移行する前癌病変です。
主な治療法:金属メスによる切除、外用剤(イミキモド)、液体窒素冷凍凝固法
⑪ ボーエン病
高齢者によくできる、赤から黒の平坦に盛り上がったできものです。日光角化症と同様、有棘細胞癌という皮膚癌に移行する前癌病変です。一部はヒト乳頭腫ウイルス(HPV16/31/33)と関連しており、慢性ヒ素中毒の症状として生じることもあります。
主な治療法:金属メスによる切除
⑫ 有棘細胞癌
多くの場合、赤くごつごつした瘤で、表面がぐじゅぐじゅしたり出血したりすることもあります。リンパ節などに転移することがありますので、ただ取るだけではなく画像検査も必要になることがあります。当疾患を疑った場合は、皮膚外科や皮膚腫瘍の専門医のいる施設にご紹介させて頂きます。
主な治療法:金属メスによる切除、放射線療法、薬物療法
⑬ ケラトアカントーマ
顔によくできる瘤状のできもので、真ん中が火山の噴火口のようにくぼんでいます。一応良性のくくりに入るのですが、病理検査をして顕微鏡で見てみても悪性にそっくりなのと、まれに将来悪性化することがあるので慎重な対応が必要です。皮膚生検で一部取るとそれをきっかけに傷あとを残して消えてしまうことがあります。
主な治療法:金属メスによる切除
⑭ 悪性黒色腫
いわゆるほくろの癌です。黒っぽいことが多いですが、赤いこともあります。身体のどこにでもでき、爪にも生じることがあります。血流やリンパ流に乗って、身体の他のところに転移することがあります。皮膚生検で一部切り取ると悪い細胞が広がってしまう可能性があるため、ダーモスコピー検査で当疾患を疑った場合は、一部切り取らずに全部取って検査をしたり、検査をしないでそのまま専門医にご紹介させて頂いたりすることもあります。
主な治療法:金属メスによる切除、放射線療法、薬物療法
⑮ 隆起性皮膚線維肉腫
赤くてごつごつしたしこりです。皮膚線維種の悪性版ですが、皮膚線維種よりも深い脂肪の層まで入っていきます。病理検査では、特殊な方法で検体を染めることで診断に繋げます。当疾患が疑わしい場合は、皮膚外科や皮膚腫瘍の専門医のいる施設にご紹介させて頂きます。
主な治療法:金属メスによる切除、放射線療法、薬物療法
診断方法
最も基本的なのは視診、触診です。解剖学的部位、形、色、表面の性状、深さ、軟らかさを確認し、必要により、ダーモスコープ(詳しくはこちら)でさらに表面の詳しい性状や、深部の様子、血管の発達の仕方を確認します。
場合により一部取って調べる部分生検や、全部取って調べる全切除生検を行い、病理組織学的検査と言って、取ったものをスライスして顕微鏡で観察し、確定診断を図ることもあります。病理検査は外部の検査機関で、病理を専門とする医師によって行われます。なお、全切除生検の場合は、切除を目的とした手術の扱いになります。
また、何もしないで経過観察とし、その後大きくなったり消えたりするのか、色が濃くなったり形が変わったりしないか、といった経時的変化をみて診断を進めていくこともあります。
治療方針
切除をすべきかどうか、切除をするなら適切な時期はいつか、まず検討します。
切除をする場合は、単に取るだけではなく、いくつか目標があります。それは、できるだけ傷あとを残さないこと、できものを残さないこと、将来再発させないことです。これらは時としてトレードオフとなり、あちらを立てればあちらが立たない、となりがちですので、患者さんの希望を聞きながら、優先順位を決めて手術の方法を選んでいきます。
手術の方法
① 金属メスやはさみで切るか、トレパン(パンチ)でくりぬいて縫う方法
② はさみで切るか、トレパン(パンチ)でくりぬいて縫わない方法
③ 高周波ラジオ波メスで削る方法
④ 炭酸ガスレーザーを照射する方法
これらの違いについては、別のページで詳しく説明しています。
術後管理について
- 処置後は、縫わないで生傷になっている場合は、毎日洗浄後に軟膏塗布、ガーゼ保護を行い、傷がふさがるまで1~3週間ほど続けます。
- 縫った場合は1~2週間後に抜糸を行います。
- 傷あとは通常、最初は赤っぽく、数か月、数年かけて白くなっていきます。
- 抜糸のあるなしに関わらず、指示された期間に再診して頂く必要があります。また、それ以外にも異常を感じたときは診察を受けてください。
副作用・リスク
- 麻酔薬のアレルギーが起こる可能性があります。
- 創部が細菌感染を起こしたり、血種と言って皮膚の下に血だまりができたりすることがあります。
- 縫った傷が開いてしまう縫合不全が起こることがあります。
- 傷あとが色素沈着または色素脱失として残る場合があります。
- 肥厚性瘢痕やケロイドが生じることがあります。※詳しくはこちら
- できものをぎりぎりで取った場合は、できものが一部残っている可能性、後日再発する可能性があります。
- 病理検査で悪性と判明した場合、追加の治療が必要となることがあります。
- 治療経過によって、診断が後日変わることがあります。
禁忌(治療を受けられない方)
- ペースメーカーや植込み型除細動器を使用している方
- 妊娠中の方(安全性が確立していません)
- その他、医師が不適切と判断した場合
注意事項
- 糖尿病など創傷治癒に影響を及ぼす疾患をお持ちの方は、治りが遅くなる可能性があります。
- 抗血小板薬、抗凝固薬を服用中の方は、出血のリスクが高まるため必ず事前にご相談ください。