
水虫、爪水虫
足白癬<水虫>・爪白癬<爪水虫>について
足白癬は俗に水虫と呼ばれ、白癬(はくせん)菌という真菌(カビ)が足の皮膚に感染したものです。足の指の間、足の裏に水ぶくれ、皮むけが出て、かゆいこともかゆくないこともあります。白癬が爪に感染したものを爪白癬といいます。足の爪が多いですが、手の爪に生じることもあります。
白癬菌はケラチンというたんぱく質を栄養源として生息するため、皮膚の角層や爪に寄生するのです。白癬菌は高温多湿な環境を好み、温泉やプールなど裸足で歩く場所に多く存在します。日本には梅雨の湿度が高い季節にうつったり悪くなったりする傾向があり、多くの方が悩まされる疾患です。特に汗をかきやすい方や長時間革靴を履く方はかかりやすく、糖尿病の方は細菌感染も合併するリスクが高いため、注意が必要です。
足白癬<水虫>
足白癬は、以下のような3つのタイプに分かれます。
趾間型(しかんがた)
趾間(しかん)とは足の指の間のことを指します。
赤み、水ぶくれができて、皮膚が白くふやけたり、ただれたりするのが特徴です。
かゆみを伴うことが多く、ただれから細菌感染を起こすと痛みが出て赤みも拡がります。
特に4番目の趾間(薬指と小指の間)にできやすいタイプです。
小水疱型
小さな水疱が足の裏や側面に発生し、強いかゆみを伴います。水疱が破れると皮がむけ、痛みやしみる症状が出ることもあります。梅雨時に起こりやすく、放っておいても秋にはなんとなくよくなり、また湿度が上がってくると出てくる、といったことが多いタイプです。
角質増殖型
足の裏、踵を中心に角質が厚くなり、表面がごわごわします。かゆみは少ないですが、ひび割れが生じると痛みを伴うことがあります。外用剤が効きづらく、飲み薬の方がよく効きますが、副作用にも注意が必要です。
爪白癬<爪水虫>
白癬(はくせん)菌が爪に感染したものを爪白癬と言います。足の爪のことがほとんどですが、まれに手の爪のこともあります。爪白癬は、以下のような4つのタイプに分かれます。
1.遠位側縁爪甲下爪真菌症
爪が先の方や横側から爪が濁ったり分厚くなったりするタイプ
2.表在性白色爪真菌症
爪の表面だけが濁るタイプ
3.近位爪甲下爪真菌症
爪の根元側から濁ってくるタイプ
4.全異栄養性爪真菌症
爪全体が濁って分厚くなりもろくなったタイプ
足白癬<水虫>・爪白癬<爪水虫>の予防方法
足を清潔に保つ
白癬菌が皮膚についても、角層に侵入するには時間がかかります。毎日足を指の間まで丁寧に洗うことが大切です。洗浄後はタオルで水分を十分に拭き取り、乾燥させることで白癬菌に感染しにくくなります。足に汗をかきやすい人や、高温多湿の環境にいる人は、こまめに洗浄するとよいでしょう。
通気性の良い靴・靴下を選ぶ
通気性の悪い靴や化学繊維の靴下を履くと、足が蒸れやすくなり、白癬菌が増殖しやすい状態になります。吸湿性の高い綿や麻の靴下を選び、靴の中に湿気がたまらないよう、毎日同じ靴を履くことを避けて複数足を履き回したり、靴の中に乾燥材を入れたりするのもよいでしょう。
肌に触れるものは共用にしない
白癬菌はスリッパやタオル、バスマットなどを介して感染する可能性があります。家族内に水虫の方がいる場合は、それらの共用は避け、個人専用のものを使用することが重要です。
公共施設利用時の注意
温泉、プール、スポーツジムの更衣室など、裸足で歩く場所には白癬菌が多く存在します。施設内ではサンダルを使用し、利用後は足を洗って十分に乾かす、帰宅したらお風呂場に直行して足だけ洗っておく、などの対策をしておくと、家に菌を持ち込まなくて済みます。
足白癬<水虫>・爪白癬<爪水虫>の検査
症状のある部位から角質や爪の一部を採取し、直接顕微鏡検査で白癬菌の有無を確認します。爪については、顕微鏡検査でみつからないときには、抗原検査を実施することもあります。自己判断では湿疹や爪の変形と区別が難しいため、適切な診断を受けることが重要です。
足白癬<水虫>・爪白癬<爪水虫>の治療法
下記では、薬剤については先発品のみ記載しています。
1.外用薬(塗り薬)
足白癬の場合、ルリコン®軟膏/クリーム/液、ラミシール®軟膏/クリーム、ぺキロン®クリーム、アスタット®軟膏といった外用薬が使用されます。足の裏全体と指の股の全部に塗る必要があります。足の甲から足の裏に向かって触ってみると、触わり心地が途中で変わるのが分かると思います。足の裏の方が角質が分厚いためです。角質の分厚い部分を目印にして塗ってください。症状が改善しても菌が残っている可能性があるため、定期的に診察を受け、指示された期間外用を継続することが重要です。爪白癬については、爪専用の液体タイプの薬を用います。クレナフィン®外用液とルコナック®爪外用液の2種類があります。分厚いところ、変色しているところを削り、爪を薄く短くすると薬が効きやすいです。自分で削れない、という場合は、当院で削ることもできますが、ご自宅でもやすりでやするなどして、分厚くしない、伸ばさないことを目標にケアをして頂くと、薬が効きやすいでしょう。軟膏、クリーム、液のいずれもかぶれることが稀ならずあります。かぶれたらすぐに受診し、かぶれに対する治療を受けましょう。
2.内服薬(飲み薬)
角質増殖型の足白癬や爪白癬では、内服抗真菌剤を用いることがあります。服用期間は数か月にわたり、副作用で肝機能が悪化することがあるため、血液検査を行いながら慎重に経過を観察します。他に飲んでいる薬との飲み合わせが悪くて飲めないこともあります。また妊娠中、授乳中の方は内服ができません。なお、当院ではペーパーレス化のため、血液検査の結果はアプリでお渡ししております。
足白癬<水虫>・爪白癬<爪水虫>の治療期間
足白癬・爪白癬の治療期間は、感染の部位や症状の程度によって異なります。症状が軽快したために治療をやめてしまい、また次の年に再燃して受診する、という患者さんがとても多いので、一度で根治できるよう、根気強く治療を続けて頂きたいと思います。
足白癬の治療期間
趾間型・小水疱型の場合、抗真菌薬の外用を開始して1~2か月で水ぶくれ、赤み、かゆみなどはよくなってきます。見た目には症状がなくなっても、分厚い角層にはまだ真菌が住んでいるため、そこからさらに2~3か月継続することが推奨されます。角質増殖型では、角質が厚くなることで薬剤の浸透が妨げられ、治療期間が長くなる傾向があります。内服薬を用いる場合は、ラミシール錠またはイトリゾールカプセルを用います。やはり治療は数か月にわたります。
爪白癬の治療期間
爪白癬の治療期間は、爪の伸びる速さに依存します。爪の中で菌がいるエリアが、爪の伸長に伴って先の方に移動し、この部分を切ってしまうことで菌を減らしていきます。外用剤の場合、1年以上かかることも多いです。内服薬を使用する場合、ラミシール®錠、イトリゾール®カプセル、ネイリン®カプセルの3種類があり、ラミシール®錠は1日1回の内服を6か月、ネイリン®カプセルは1日1回の内服を12週間行います。イトリゾール®カプセルは1日2回の内服を1週間続けて3週間休薬する、というのを3サイクル行います。