
円形脱毛症
円形脱毛症とは?
円形脱毛症とは、頭髪や体毛が突然抜け落ち、円形または楕円形の脱毛斑が生じる疾患です。特に前触れもなく発症し、かゆみなどの自覚症状もありません。
数か月で自然に発毛して治癒することもあれば、脱毛斑が拡がったり、増えたり、長期にわたって続いたりすることもあります。また一度治ってもまたぶり返すこともあります。
脱毛をきたす疾患には他にもいくつかあり、また円形脱毛症の場合、自然治癒するかどうか予測ができないため、脱毛を見つけたらまずは医師の診断を受け治療を検討されることをお勧めします。
円形脱毛症の種類
- 通常型(斑状型)
- 単発型:脱毛斑が一つだけのもの
- 多発型:脱毛斑が二つ以上あるもの
- 全頭型:頭部全体が脱毛しているもの
- 汎発型:頭部全体の他、眉毛、睫毛、髭、体毛まで抜けているもの
- 蛇行型:頭髪の生え際が帯状に脱毛するもの
- 逆蛇行型:側頭部と後頭部の毛は残っていて、前頭部と頭頂部に帯状に脱毛しているもの
- びまん型:はっきりとした脱毛斑がないが、全体に髪の毛が薄くなっているもの
円形脱毛症の病因
自己免疫性疾患と考えられています。普段は免疫系に攻撃されないはずの毛包が、リンパ球に侵されて縮小してしまい、毛が細くなって抜け落ちます。
遺伝的素因を背景に、 疲労やウイルス感染症、ワクチン接種、出産や精神的あるいは身体的なストレスなどの環境因子が引き金となって発症すると推察されています。最近では新型コロナウイルス感染症やそのワクチンによって引き起こされたと考えられる症例が報告されています。
アトピー性皮膚炎や橋本病、関節リウマチ、1型糖尿病などの他の自己免疫性疾患を合併することがあります。
円形脱毛症の治療
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Step
01
1. ステロイド外用
ステロイドの軟膏やクリームを1日2回外用します。ローション製剤は本来保険適用がないですし、完全に脱毛した部位には軟膏やクリームが塗りにくいことはありません。単発型でも多発型でも、どの年齢層においても選択肢となります。副作用として皮膚の萎縮が問題となります。
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Step
02
2. ステロイド局所注射
脱毛部位にステロイドの注射を行います。4~6週間に1回が推奨頻度です。単発型や多発型では適用となりますが、全頭型には適していません。副作用として、皮膚の萎縮が起き、ぼっこりと陥凹してしまうことがあります。また眉毛部では眼圧への影響が懸念されるため、眼科の先生にも相談した方がよいでしょう。痛みを伴うため、小児にはお勧めできません。注射の際出血します。隠したい場合は帽子などをお持ちください。
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03
3. ステロイド内服
発症初期で急速に進行する成人の場合に行うことがあります。完全に治ることもあるのですが、内服終了後の再発が多いという問題があります。副作用として、糖尿病、骨粗鬆症、高血圧、肝機能障害、緑内障などに注意が必要です。小児では避けるべき治療です。
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Step
04
4. ステロイドパルス療法
入院の上、3日間ほどステロイドを点滴投与します。ステロイドの内服と同じ副作用があります。多発型、脱毛範囲が少ない例、発症から間もない例、女性症例などでよく効くという報告がありますが、やはり安全性の低さと再発率の高さが問題となります。ご希望の方には入院施設をご紹介致します。小児では避けるべき治療です。
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05
5. 局所免疫療法
SADBEやDPCPといった刺激の強い薬品を皮膚に塗りかぶれさせる治療です。反応が強いと強い赤みや水ぶくれができたり、熱が出てリンパ節が腫れたり、また色素沈着を生じたりすることがあります。保険適用はなく、当院では現在取り扱いがございません。ご希望の方には実施施設をご紹介させて頂きます。
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06
6. 紫外線療法
主に、通常型(単発型、多発型)の成人に勧められます。当院ではナローバンドUVB(narrow-band UVB、NB-UVB)とエキシマライトの2種類をご用意しています。詳しくは、紫外線療法の頁で詳しくご説明しています。
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Step
07
7. 経口JAK阻害剤またはJAK3/TECファミリーキナーゼ選択的阻害剤
2025年10月現在、保険適用のある薬剤として、JAK1/2選択的阻害薬であるバリシチニブ(オルミエントⓇ;日本イーライリリー)錠、JAK3/TECファミリーキナーゼ選択的阻害薬であるリトレシチニブ(リットフーロⓇ;ファイザー)カプセルの2剤があります。重症かつ難治性の円形脱毛症に対して適用となります。免疫抑制の副作用があり、費用は高額で、中止により再発する例もあります。特定の施設でしか投与することができません。適用と考えられる患者さんの場合は、ご希望に応じて、高次医療機関をご紹介致します。