
小児皮膚科
小児皮膚科
小児の皮膚の特徴
皮膚は、外側から順に、表皮、真皮に分かれ、さらにその下に皮下脂肪、筋層があります。表皮はさらに4層に分かれ、一番外側の層を角層といいます。角層は大人では0.01〜0.03 mmの厚さで、子供はその3分の1から2分の1の厚さといわれています。角層は外界の刺激から皮膚を守る役割をしていますので、子供の皮膚はバリア機能が弱いといえます。
また、子供の皮脂の分泌量は、年齢によって大きく異なります。新生児期は母親由来のホルモンの影響で皮脂の分泌が盛んですが、生後3か月を過ぎたあたりから分泌は減り、1歳から6歳ころまでは皮脂の分泌が生涯の中でも最も少なくなります。その後、思春期の頃から皮脂の分泌は再び増え始めます。赤ちゃんの皮膚は最初はベタベタ、その後はカサカサになりやすいのです。
さらに、赤ちゃんは首が短かったりお肉がむちむちしていたりするために、首の下、脇、股の付け根、手首、足首などで長時間皮膚と皮膚がくっついた状態になり、汗がたまって蒸れやすくなります。
このような特徴から、子供では皮膚トラブルがよく起きます。また乳児期ではおむつによるトラブルも多いですし、保育園・幼稚園に行くといろいろな感染症にかかる機会も増えます。生まれつきの皮膚の疾患をお持ちのこともあるでしょう。ケアをするのは当然親御さんになりますが、特に初めてのお子さんの場合は戸惑うことも多いものです。ぜひ当院にご相談にいらしてください。
小児によく見られる皮膚疾患
① 乳児湿疹
生後数週から数か月までの間は、湿疹・皮膚炎が起こりやすく、まとめて乳児湿疹と呼んでいますが、その正体はさまざまです。上記で述べたように、新生児期には、皮脂の分泌が盛んなため、頭皮、おでこなどを中心に赤くなり、黄色いフケがつく脂漏性皮膚炎になりやすくなります。
その後は、皮脂の分泌が減ってきますので、お子さんによっては皮脂欠乏性湿疹を起こします。石鹸を使いすぎたりすると特に乾燥しやすいです。また、おむつそのもののかぶれや、うんち、おしっこなどのかぶれでおしりや股のつけねが赤くなったりするのを、おむつ皮膚炎と呼んでいます。
いずれも塗り薬で治療しますが、適切なスキンケアが最も大切です。湿疹・皮膚炎の頁もご覧ください。
治療:適切なスキンケア、保湿、ステロイド外用
② 伝染性膿痂疹〈とびひ〉
夏場に多くみられる細菌感染症です。ちょっとした怪我や湿疹をかいたあとがきっかけにでき、水ぶくれやかさぶたが「飛び火」して拡がっていきます。A群β溶連菌や黄色ブドウ球菌という細菌が原因となることが多く、黄色ブドウ球菌の場合には、皮膚を剥がす酵素を作るために、水ぶくれが多くできます。
集団感染しやすいですが、学校保健安全法では、第3種の、医師の判断に応じて出席停止を判断する疾患に分類され、通常は患部をガーゼなどで覆って他のお子さんに触れないようにすることで登園できます。ただしプール遊びについては保護ができないので、控えた方がよいでしょう。
治療:抗生剤の内服、外用
③ 伝染性軟属腫〈水いぼ〉
小児に多いウイルス感染症で、身体のいろいろなところに表面がつるっとした数㎜大のピンク色のつぶつぶが多発します。伝染性軟属腫ウイルスという名前のウイルスが原因ですが、細菌感染も起こして赤く腫れたり膿んだりすることもあります。
数か月かけて自然に治ることもありますが、かきこわしている場合は治療をお勧めします。ピンセットでつまんで取るのが一般的ですが、痛いので、麻酔のテープを貼って1時間待ってから処置をすることもあります。処置が苦手なお子さんの場合は、抗ウイルス作用のある銀が配合された3A M-BFクリーム(「M-BFクリーム」、自費診療 価格表はこちら)を塗って治療することもあります。
1日2回外用すると、効果がある場合には2週間から2か月くらいで患部が赤くなってきて、その後1か月くらいで消えていきます。3か月経っても治らない場合は、つまんで取った方がよいかもしれません。
治療:自然治癒、摘除、クリーム外用
④ 異所性蒙古斑〈青あざ〉
蒙古斑とは、生まれつきお尻や腰にある青っぽいあざのことで、黄色人種のほとんどにあります。これがお尻や腰以外にあると、異所性蒙古斑と呼びます。青っぽいのは、メラノサイトという色素を作る細胞が、真皮という深いところにあるためです。
お尻の蒙古斑は通常4歳から10歳くらいで自然に薄くなって消えていきますが、異所性蒙古斑の場合は残ることが多いため、見た目の問題を考慮して治療を検討します。
治療は3か月おきのレーザー照射です。保険適用となるのは、ルビーレーザー、YAGレーザー、アレキサンドライトレーザーで、当院ではDiscovery Pico Plus(ディスカバリーピコプラス)というレーザー機器を備えており、QスイッチルビーレーザーとピコYAGレーザーを使用することができます。
ただし、Qスイッチルビーレーザーの保険適用は5回までになります。レーザー照射は早く始めた方が皮膚が薄いのでよく効きます。ただし、レーザーが強すぎると、色が白く抜けたり、傷あとが残ったりする副作用があります。親御さんとしては早く治したい、と思うでしょうが、焦らず少しずつ薄くするくらいのつもりの方がうまくいきます。レーザー照射中は、色素沈着の予防のため、日焼け止めを塗ることをお勧めしています。
レーザーは痛みがあるので、麻酔のテープやクリームを用いることがありますが、副作用があるため使える量が決められており、面積が大きい場合には全て覆うことができません。
治療:レーザー(Qスイッチルビーレーザー、ピコYAGレーザー)
⑤ 扁平母斑〈茶あざ〉
淡い茶色のしみで、身体のどこにでもできます。
盛り上がってきたりすることはないので、それ単独であれば放っておいても構いませんが、見た目が気になる場合はレーザー治療を行います。
ところが、レーザー治療の成績があまりよくありません。1歳未満で治療を行うと治りやすいのですが、成人ではよく効くのは2割くらいといわれ、人によっては再発したり、効かないどころか炎症後色素沈着というレーザー治療の副作用によって余計に濃くなったりすることもあります。
濃くなっても時間が経てば薄くなることが多いのですが、元通りになるだけですし、元通りになるのに数か月から1年以上かかることもあります。またレーザーが効きすぎて、白抜けといって元の皮膚の色よりも薄くなったり、薄くなったところと濃くなったところがまだらになってかえって見た目が悪くなったりするリスクもあります。
面積が大きい場合は、全部に当てて全部濃くなったり白抜けしたりしてしまうといけないので、一部分だけ試験照射をするのもよいでしょう。なお、境界が地図状といってギザギザしている方が効きやすいといわれています。
扁平母斑に対して使うレーザーには、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、YAGレーザーがあります。ただし、このうち保険適用になっているのは、Qスイッチのルビーレーザーのみで、3か月空けて2回までとなっています。
当院では、Discovery Pico Plus(ディスカバリーピコプラス)というレーザー機器を備えており、ピコYAGレーザー、とQスイッチルビーレーザーのいずれも使用することができます。ピコYAGレーザーを使用する場合は自費診療になります。
痛みに関しては、麻酔のテープやクリームを用いることがありますが、副作用があるため使える量が決められており、面積が大きい場合には全て覆うことができません。
治療:レーザー(Qスイッチルビーレーザー、ピコYAGレーザー)
⑥ 単純性血管腫/乳児血管腫(いちご状血管腫)〈赤あざ〉
赤ちゃんに生まれつきよく見られる赤あざには2種類あります。
単純性血管腫は、基本的には盛り上がらない赤いあざで、身体のどこにでもできますが、眉間やまぶた、首の後ろにできることが多いです。英語圏では、顔にできたものは「天使のキス」、首の後ろのものは「コウノトリの噛みあと」などといったあだ名で呼ばれています。
見た目以外の問題はありません。まぶたの赤あざは2歳くらいまでに自然に消えることが多いのと、レーザーを当てるのが困難な部位であることから様子をみることが多いです。首の後ろにできたものはUnna母斑と呼ばれ、残ることが多いので、気になる場合はレーザー治療を行ってもよいでしょう。
ただし、髪の毛が生えてくると気にならなくなること、レーザーによる脱毛のリスクがあることから、絶対にレーザーをやった方がよい、ということはありません。レーザーは、色素レーザーという種類のもので、当院ではV beam Ⅱを採用しています。なお、この赤あざが広範囲に見られるときには、血管奇形症候群といって、身体の他の血管の異常を合併していることがあります。
治療法:レーザー(色素レーザー)
乳児血管腫(いちご状血管腫)は、典型的には生後すぐに赤いぽちっとしたできものとして出現し、数か月で急速に大きくなって瘤状になります。
色は真っ赤で、表面がつぶつぶしているので、長らく「いちご状血管腫」という名前で呼ばれていましたが、最近は「乳児血管腫」と呼ぶことの方が増えています。(なお、皮膚の表面にできる「局面型」、「腫瘤型」の他、皮膚の下に青っぽく見える「皮下型」というタイプもあります。)放っておいても1歳くらいをピークに自然に退縮するのですが、あたかも急激なダイエットの後のおなかのようにたるんだ皮膚が残ったり、傷あとが残ったりすることもありますので、近年では積極的な治療が勧められています。
また、目や鼻、口の近くなど機能に影響する部位では例え小さくても早期治療が望まれます。治療は、ヘマンジオル®シロップという内服薬とレーザー治療があります。内服治療が必要と考えられる場合は、当院から専門施設にご紹介致します。
病院により、導入時に1週間の入院が必要な施設、外来で導入する施設があります。レーザー治療は、色素レーザーというレーザーで、当院ではV beam Ⅱを採用しています。内服薬とレーザー治療を併用することもあります。増大の速さによっても対応は変わってきますので、できものが写った過去の写真があればお持ちください。
治療法:内服(ヘマンジオル®シロップ)、レーザー(色素レーザー)
小児のレーザー治療を検討されている保護者の方へご注意
レーザー光は目に入ると失明してしまうリスクがあるため、付き添いの保護者の方には処置中保護メガネをかけて頂きます。
メガネをかけられない小さいお子さんの場合、ご本人は当院のスタッフが目を覆うことで保護します。お子さんがよく動くご年齢の場合、保護者の方にもお子さんが動かないよう抑えるなどご協力を頂くことがあります。少しの間可哀そうですが、安全のためですので、ご理解くださいますようお願い致します。